茜色ダイアリー

僕の日常を切り取っていきます。

2020年 上半期楽曲 & アルバム10選

選曲基準

2020年にフル音源が初めてリリースされた曲

たとえば、「竹内アンナ - B.M.B」は、2020年3月18日にリリースされた『MATOUSIC』に収録されているが、初出は2019年11月27日のデジタルリリースである。
こういった場合は、選曲基準を満たしていないものとし、本記事の対象とはしない。

 

1つのコンテンツ、アーティストから1曲だけ選ぶ

この縛りを設けないと、『DREAMY-LOGUE』から6曲選ぶ、といったことがまかり通るので。

 

 

楽曲10選

POLLYANNA - 運命の人

作詞・作曲:斎藤モトキ

運命の人

運命の人

  • POLLYANNA
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

(Spotify)
1月29日リリース、POLLYANNA 1st full Album『pantomime』より。

 

後の「アルバム10選」の節でも触れるが、バンド結成当時〈最新型渋谷系ポップ〉を掲げていたPOLLYANNAは、新たに〈ストライプ・ロック〉というテーマに舵を切った。

 

今回取り上げる「運命の人」は、彼らが掲げる〈ストライプ・ロック〉というテーマをもっとも端的に表している曲だと思う。
シンセの使い方や、ところどころに入るキメに、少しだけポスト渋谷系的な雰囲気を感じるものの、曲自体は分かりやすくロックをやっている。ここに見える絶妙なバランス感覚が、まさに彼らの言う〈ストライプ・ロック〉の形であり、「POLLYANNAらしい」形なのだろう。

 

 

伊藤美来 - hello new pink

作詞・作曲:ゆいにしお
編曲:水口浩次

hello new pink

hello new pink

  • provided courtesy of iTunes

(Spotify)
2月12日リリース、伊藤美来 6th Single『Plunderer』より。

 

#声優シティ・ポップ の系譜はそれこそ、花澤香菜Blue Avenue』のあたりには既に隆盛を極めていて、その頃には、坂本真綾竹達彩奈中島愛といった主要なボーカリストも顔を揃えていた。
そんななか、『PopSkip』を掲げ、#声優シティ・ポップ界に突如として殴り込みをかけてきたのが伊藤美来である。

 

同時代に #声優シティ・ポップ界で評価されたボーカリストは多く存在する(e.g. 上田麗奈尾崎由香早見沙織...)が、とりわけ伊藤美来が評価される所以は、ボーカルと楽曲ジャンルの親和性にある。

 

伊藤美来の飾らない歌声は、シティ・ポップ渋谷系といったポップスが描く「日常の延長」的な感覚とよく合っていて、たとえば、新しい服をおろして外に出たときに、いつもの日常が少しだけ色づいて見えるような、そんな感覚を楽曲に与えてくれる。

 

「hello new pink」については、「おすすめの曲5選(2020年5月) - 茜色ダイアリー」で詳しく触れている。

 

 

yu_tokiwa.djw.OSTER_project - murmur twins from O to W

作詞:常盤ゆう
作曲:脇田潤
編曲:OSTER project

3月4日リリース、『beatmania IIDX 20th Anniversary Tribute BEST』より。

 

このリミックスが世に出たのは2020年だが、原曲の「murmur twins」はbeatmania IIDX 8th Style(2002年)が初出。正直、2020年の曲として10選に入れるのはどうか、と思ったが、このリミックスがとても好きなので入れることにした。

 

鍵盤メインで構成される原曲に比べ、ストリングスがメインで使われており、ところによってはリハモが行われている。
この過程で原曲のイメージを大きく崩すような改変は行われていないものの、ストリングスやベースラインからリミキサーのOSTER projectの色をひしひしと感じることができる。

 

現在、『beatmania IIDX 20th Anniversary Tribute BEST』は配信が行われておらず、CDでしか入手することができないので勧めづらいが、「murmur twins」のファン、そしてOSTER projectのファンには是非、このリミックスを聴いてもらいたい。

 

 

駒形友梨 - On My Way

作詞:Kanata Okajima
作曲:中野領太
編曲:高橋 諒[Void_Chords

On My Way

On My Way

  • provided courtesy of iTunes

3月4日リリース、駒形友梨 3rd mini Album『a Day』より。
2nd mini album『Indigo』まではサブスクにあるので、どこかのタイミングで解禁されるのだろう(3ヶ月で解禁されないなら、次は半年後か?)。

 

なんといっても、サビの入りのボーカルが良い。
駒形友梨の伸びやかで力強い歌声と、サビで最高の盛り上がりを見せるメロとが調和し、我々に活力を与えてくれる。

 

「陽の光、デイタイムの明るさや楽しさ」*1というアルバムのテーマと、彼女自身の歌声や人柄が非常によくマッチしているのも良い。

 

 

上田麗奈 - あまい夢

作詞・作曲:ORESAMA
編曲:⼩島英也

あまい夢

あまい夢

  • provided courtesy of iTunes

(Spotify)
3月18日リリース、上田麗奈Empathy』より。

 

おそらく、#2020年上半期楽曲10選 もしくは #声優アーティスト楽曲大賞2020上半期 において、上田麗奈『Empathy』に収録されている曲は多くの人から選ばれるが、どの曲が選ばれるかはかなりバラけてくるのだと思う。実際、筆者もどの曲を選ぶか非常に悩んだ。

 

そういった葛藤の末、私が「あまい夢」を選んだのは、上田麗奈が新たに到達しようとした世界観を最も端的に表しているからに他ならない。
『Empathy』について、公式HP*2には「今までにないポップな曲調の楽曲などに挑戦」という文言があるが、これを最も感じさせるのが「あまい夢」だと言いたいわけである。

 

これに関しては、「おすすめの曲5選(2020年3月中旬) - 茜色ダイアリー」にて、より詳しい考察を行っている。

 

 

竹内アンナ - I My Me Myself

作詞・作曲:竹内アンナ
編曲:竹内アンナ、名村武

I My Me Myself

I My Me Myself

  • 竹内アンナ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

(Spotify)
3月18日リリース、竹内アンナ 1st Album『MATOUSIC』より。

 

昨年から今年にかけて、iri、eill、竹内アンナなどの女性R&Bシンガーが台頭してきている印象がある。なかでも、今回取り上げる竹内アンナは、自身が演奏するアコースティックギターサウンドを前面に押し出した、パワーのある楽曲が魅力だ。

 

「I My Me Myself」を取り上げたのは、私が彼女に出会ったのがこの曲だったからだ。本当は、『MATOUSIC』に収録されている曲のなかだと「SUNKISSed GIRL」、「B.M.B」あたりが好きなのだが、どちらも初出が2019年なので選ばなかった。

 

これも「おすすめの曲5選(2020年2月) - 茜色ダイアリー」で言及している。

 

 

AiRBLUE - 私たちはまだその春を知らない

作詞:shilo
作曲・編曲:石濱翔MONACA

私たちはまだその春を知らない

私たちはまだその春を知らない

  • AiRBLUE
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

(Spotify)
3月25日リリース、CUE! 02 Single『beautiful tomorrow』より。
「AiRBLUE Moon - MiRAGE! MiRAGE!!」と悩んだが、こちらで。

 

Dメロのタイトル回収がアツい(以下にDメロの歌詞を引用する)。

この初めての季節が
一度しかないことを
そう後で思い知るだろう
私たちはまだその春を知らない

青春の真っ只中にいることを「私たちはまだその春を知らない」と表現するのもかっこいい。

 

 

乃木坂46 - I see...

作詞:秋元康
作曲:youth case

編曲:佐々木博史

I see...

I see...

  • provided courtesy of iTunes

(Spotify)
3月25日リリース、乃木坂46 25th Single『しあわせの保護色』より。

 

ディスコやファンクといったジャンルが土台にあるアイドル・ポップを、乃木坂46の4期生の雰囲気に合うようにチューニングし直したといった感覚の楽曲。
4つ打ちのキックの主張が割とはっきりしていたり、サビでストリングスが暴れまわっていたりといった90年代後半を思わせるアプローチを、未だ若い乃木坂46の面々でやることに価値があるのだと思う。

 

ラスサビ後の「ラララ...」のメロが完全に「Whiteberry - 夏祭り」なのが少し面白くて、そこを聴こうと延々リピートしていたら再生回数が80を超えていたらしい。

 

 

藤井 風 - 帰ろう

作詞・作曲:藤井 風

帰ろう

帰ろう

  • 藤井 風
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

(Spotify)
5月20日リリース、藤井 風 1st Album『HELP EVER HURT NEVER』より。

 

このアルバムのなかで、藤井 風の価値観が最も色濃く反映されている曲だと思う。

ああ 全て与えて帰ろう
ああ 何も持たずに帰ろう

「より良い死に方をするために、より良い生き方をする」という彼の人生観を反映した歌詞は、私と同い年の人間が書いたものとは思えないほど、洞察が深い。

 

詳しくは「おすすめの曲5選(2020年5月) - 茜色ダイアリー」で考察している。

 

 

降幡愛 - CITY

作詞:降幡 愛
作曲・編曲:本間昭光(bluesofa)

CITY

CITY

  • 降幡 愛
  • J-Pop
  • provided courtesy of iTunes

(Spotify)
6月11日先行リリース、降幡愛 Debut mini Album『Moonrise』のリードトラック。

 

「降幡が愛する1980年代のシティポップを、本間のプロデュースによって表現した楽曲」*3と評される本楽曲、生半可なリスペクトなどではなく、本気で80'sをやっている。

 

おそらく、降幡愛が抱えているファン層と80'sのファン層は面白いくらいに一致しない。前者のメイン層は、ラブライブ!サンシャイン!!黒澤ルビィ役で彼女のことを知った10代後半から20代後半の男性だろうが、この層がバチバチの80'sを聴くとは思えない。

 

しかしながら、私はこのリリースの主要な購買層であろう年代層に媚びず、自分がやりたい音楽を徹底的にやる姿勢を評価したい。10選に選んだのはそういった意図も含まれている。 

 

 

アルバム10選

POLLYANNA『pantomime』

(Apple Music) (Spotify)

 

1月29日リリース。
バンド結成当時、〈最新型渋谷系ポップ〉というキーワードを掲げていたPOLLYANNAが、〈ストライプ・ロック〉という新たなテーマのもとに制作した1st Full Album*4

 

これまでのリリース、なかでも1st 『CIRCLE』では、ポスト渋谷系(e.g.  Cymbals)へのリスペクトが分かりやすく感じられたが、本アルバムではその文脈を受け継ぎつつも、POLLYANNA独自の路線が提示されているように思う。

 

個人的なアルバムの聴きどころは「M4. シュガーレイン → M5. 運命の人」。

 

 

鹿乃『yuanfen』

(Spotify)

 

3月4日リリース。
田中秀和が全曲のサウンド・プロデュースを務めた、鹿乃の4th Album。
編曲陣も豪華で、そういった点でも注目度が高かった。

 

挑戦的な楽曲が多く、なかでも「M8 罰と罰」は作曲家本人に「激ヤバ鬼マスト」と言わせるほどのサウンド・メイキングで、大きな話題を呼んだ。

 

個人的には「M1. 午前0時の無力な神様」、「M4. KILIG」あたりをおすすめしたい。

 

にじさんじSMASH The PAINT!!』

(Apple Music) (Spotify)

 

3月18日リリース。
当時、サブスク解禁はおろか、ダウンロード配信すら行われなかったのは記憶に新しい。

 

Vtuberの縛りの無さを活かし(?)、各方面から豪華作家陣を大胆に集め、ボーカルのイメージと合うクリエイターを起用している点は評価が高い。たとえば、「M8. 圧 倒 的 存 在 感」では、でびるる×IOSYSという100点の組み合わせを提示してみせた。

 

何より、「M12. アンチグラビティ・ガール」を生んだことが、このアルバムの最高の功績だろう。

 

 

上田麗奈『Empathy』

(Apple Music) (Spotify)

 

3月18日リリース。
「自らによる作詞や、今までにないポップな曲調の楽曲などに挑戦」と銘打ち、デビューアルバム『RefRain』とは異なる世界観の表現を目指した意欲作。

 

上田麗奈の歌声」を軸にすることで、様々なジャンルが入り混じっても「上田麗奈」を感じられる。『Empathy』の魅力はまさにここにある。

 

 

竹内アンナ『MATOUSIC』

(Spotify)

 

3月18日リリース。
『MATOUSIC』というタイトルは竹内アンナが作った造語で、「思わず身にまとって出かけたくなる、1日を過ごしたくなる、そんな音楽でありたいという思いを込め」*5、「まとう」と「MUSIC」を足すことで出来上がった。

 

アルバムには、アコースティックギターサウンドが心地よいR&Bが多く収録され、日常を鮮やかに彩る。

 

 

iri『Sparkle』

(Spotify)

 

3月25日リリース。
注目の女性R&Bシンガー、iriの4th Album。

 

R&B、ヒップホップ、ファンクなどの様々なジャンルを織り交ぜ、そこに「重心の低い日本人離れした声質」*6と評されるボーカルが乗ることで出来上がる、質の高いグルーヴは必聴。

 

 

釘宮理恵『せめて空を』

(Spotify)

 

4月8日リリース。
前作『kokohadoko』から実に7年10ヶ月ぶりのミニアルバム。

 

釘宮理恵といえば、どうしてもツンデレキャラのイメージが先行してしまうが、本アルバムはそういった要素を切り離した、自然体な釘宮理恵を表現することに注力を置いているように感じる。

 

「川のせせらぎや森の音みたいな環境音楽、日常生活で流れていても嫌じゃない、さりげないものがやりたい」*7という本人の言葉通り、透明感がある優しい雰囲気の楽曲が多く、またそれが彼女の歌声ともよく合っている。

 

 

Run Girls, Run!『Run Girls, World!』

(Spotify)

 

5月20日リリース。
Run Girls, Run! 待望の1st Album。
これまでのシングルA面曲のほか、新曲として、ソロ曲とユニット曲がそれぞれ3曲ずつ収録されている。

 

「サクラジェラート」から続く四季シリーズの4曲目「水着とスイカ」、TVアニメ『キラッとプリ☆チャン』OP曲「イルミナージュ・ランド」、厚木那奈美ソロ曲「逆さまのガウディ」といったMONACAの作曲陣の意欲作が多く収録されており、その点で注目度が高かった。

 

個人的には「M13. イルミナージュ・ランド」で瀬尾祥太郎氏の作品を久しぶりに聴くことが出来たのが嬉しかった。

 

 

藤井 風『HELP EVER HURT NEVER』

(Spotify)

 

5月20日リリース。
2020年のJ-Popを代表するアーティスト、藤井 風の1st Album。

 

彼が有名になったきっかけである「何なんw」、「もうええわ」を始めとした全11曲は、彼の圧倒的な才能を感じさせる。

 

Vaundy、SIRUP、iriあたりのアーティストと一緒に押さえておきたい。

 

 

ふたりの文学『曲集』

(Apple Music) (Spotify)

 

6月5日リリース。
ふたりの文学、待望の1st Album。

 

まちカドまぞくOP曲「町かどタンジェント」の作詞・作編曲を務めたことで知られる辻林美穂と、POLLYANNAのベースを務める斎藤モトキがボーカルを務め、なおかつ楽曲の制作を行っていることもあってか、『曲集』にはシティ・ポップ渋谷系などの文脈を感じさせる良質なポップが揃う。

 

なかでも、本アルバム唯一の新曲「見つめていたい」のBメロ「UFOから覗いている臆病菌が邪魔で」からの展開は必聴。

 

 

 

補遺:#声優アーティスト楽曲大賞2020上半期 に向けて

楽曲10選とアルバム10選から、声優アーティスト楽曲のみをまとめておく。以下のまとめを私の #声優アーティスト楽曲大賞2020上半期 としたい(声優アーティストなのか判断が難しいアーティストには * をつけた)。

 

楽曲10選から

伊藤美来 - hello new pink
駒形友梨 - On My Way
上田麗奈 - あまい夢
* AiRBLUE - 私たちはまだその春を知らない
降幡愛 - CITY

 

アルバム10選から

上田麗奈『Empathy』
釘宮理恵『せめて空を』
Run Girls, Run!『Run Girls, World!』